税務調査でひどい目にあった社長が言う不満のNo.1は、顧問税理士先生は何にもしてくれなかった、税務署の言いなりだった、という内容の不満です。
税理士法第一条には、「(税理士の使命)第1条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」とあります。
私たちの解釈は、税法の範囲内で可能な限り顧問先(お客さま)の立場に立った税務的な判断・主張をすること、です。そのため、税務調査では、あくまでお客さまの立場で税務署(or国税局)に見解を主張し、税務署とお客さまの間に立って通訳の役割も果たします。
例え話を1つしましょう。
修繕費(一時の損金)になるのか資本的支出として資産に計上するのか、実務では判断に迷うケースはよくあることです。その判断について、税務調査で問題ない会計処理は、修繕費として処理する方法か、資産計上する方法か、どちらか分かりますか?
税務調査で問題ない=否認されない、という意味では、資産計上する方法を選択しておけば、税務調査で問題となる(否認される)ことはありません。
しかし、ちょっと待ってください。資産計上するということは、修繕費計上する方法に比べて、今期の税金を多く払うことになります。それであれば、社長としては、何とか修繕費で計上できる方法を検討して欲しいはずです。
そこで、私たち税理士の活躍の場が生まれます。
私たちは、修繕費計上できる方法について、税法解釈や判例・書籍の事例研究を踏まえて、稟議書の書き方、修繕前の設備の状態の写真撮影を指導するなど、いざ税務調査になったときに問題なく修繕費処理が認められるようにアドバイスします。さらに、実際の税務調査では、修繕費処理が認められるよう、お客さまの立場に立って、税務署に主張を行います。これらの指導や主張が私たち税理士の役割だと理解しています。
抽象的な表現をすれば、クロ(税法に違反した処理)は誰が見ても駄目ですが、グレー(税法の解釈によっては判断が分かれる処理)については、お客さまの立場に立ってチャレンジしようというのが、私たちの事務所のスタンスです。
税理士先生の中には、「税務調査で何も指摘されなかった。」と自慢する先生がみえます。その先生が、グレーな処理にチャレンジし税務署とお互いの主張を戦わせた結果、最終的に否認事項がなかったというのでしたらすばらしいことです。しかし、グレーを判断するには専門的な知識を要するため、お客さまが税法を知らないのをいいことに、グレーをすべてお客さまにとって不利で、税務署にとって有利な、税金を多く払う処理にしてしまう税理士も存在します。この場合、税務調査でもめることは一切ありませんが、そんな税理士とはお付き合いしたくないですよね。
繰り返しになりますが、私たちの事務所は、
(1)税法の範囲内で可能な限り顧問先(お客さま)の立場に立った税務的な判断・主張をすること
(2)グレー(税法の解釈によっては判断が分かれる処理)については、お客さまの立場に立ってチャレンジしよう
というスタンスで税務調査に臨んでいます。この理念にご理解・共感頂いた経営者の方は、ぜひ、私たちまでご連絡下さい。
税務調査対象はどうやって選定されるのか?
税務調査の選定基準は、まず、
1.特定業種選定
税務署内の方針で特定の業種が選定されます。例えば、この1年間は、鉄スクラップ業者全社を調査しよう、などです。
次に、
2.黒字会社
3.税歴(過去の重加算税等)
4.重要資料有り
5. 基礎データ(決算書等の数値データ)
2から5をベースに各部門の統括官が調査対象を選定します。
補足すると、黒字申告割合は、平成21事務年度では、25.5%(名古屋国税局管内では23.8%)まで低下しています。4社に1社しか税金を払っていない状況です。そのため、黒字であるだけで税務調査の可能性はグンと高まります。
税歴とは、過去の税務調査結果をまとめた税務署の記録であり、前回の税務調査から5年以上経過している法人や、仮装・隠蔽(いんぺい)があった場合に賦課される重加算税を受けた法人は、税務調査を受ける可能性が高いです。
重要資料とは、資料せん(税務署が行う取引のアンケート用紙のようなもの)やタレコミ情報で問題ありと判断されたような場合には、税務調査の可能性が高くなります。
最後に、基礎データとは、決算書等の財務分析を通じて、一気に売上がアップした場合や同業他社と比較して利益率が異常に高い場合(あるいは低い)などに、税務調査の可能性が高まります。
赤字会社に税務調査は来ない?
4社に1社しか黒字会社がない状況なので、赤字会社に税務調査が来る可能性は、黒字会社に比べればずいぶん低くなります。しかし、法人税の税務調査では、源泉所得税や消費税、印紙税の調査が同時に行われるため、赤字会社だから絶対に税務調査がないという訳ではありません。
どれくらいの割合で税務調査があるの?
平成21事務年度でみると、申告法人2,786千件の内、法人税実地調査件数は139千件で、4.8%(名古屋国税局管内5.3%)の割合です。単純に言うと、申告法人20社中1社に税務調査が来た、という割合です。
税務調査を受ければ必ず税金を取られるのか?
平成21事務年度の法人税調査実績によると、71.9%(名古屋国税局管内では71.7%)が税務調査で処理の間違いを指摘されています。逆に言えば、約3割の法人については税務調査があっても、何も間違いを指摘されていないということになります。さらに間違いを指摘された7割の法人の中には、欠損法人が含まれています。たとえ間違いを指摘されたとしても欠損金の範囲内であれば、税金を取られることはありません。
このことから分かるように、税務調査があったからといって必ずしも税金を取られる訳ではありません。
タレコミがあると、税務調査に来るか?
税務署や国税局にタレコミ(○○会社は脱税しているなど)は、かなり頻繁にあるそうです。しかしタレコミにはまったく根拠のないものも含まれているので、そのすべてを信じて税務調査を行っていたのでは、効率的な税務調査を行うことはできません。
そこで、タレコミ+他のデータで、タレコミの内容がどうも事実である可能性が高いと判断されれば、税務調査が行われます。
顧問税理士を変えると税務調査が来るか?
顧問税理士の関与状況(変更状況)を税務署や国税局は、継続して管理している訳ではありません。そのため、顧問税理士を変更したからといって、すぐに税務調査が来るということは、ありません。
税務調査を断ることはできるか?
できません。難しい言葉で言うと、納税者には受忍義務(税務調査を受ける義務)があるからです。税務調査の日程を業務上の理由から調整することは可能ですが、断ることはできません。断ることができたら、みんな断りますよね。
税務調査はいきなり来るの?
原則として、税務調査の2~3週間前に電話連絡(事前通知)が、社長と顧問税理士にあります。しかし、飲食店などの現金商売の会社やマルサ(査察)の場合には、事前通知はなく、いきなり調査官がやってきます。ちなみに、事前通知のない税務調査の割合は5%程度なので、ほとんどは、事前通知があります。
マルサ(査察)って怖い?
怖いです。
マルサとは、各国税局に設置された査察部のことです。伊丹十三の映画『マルサの女』で一躍、有名になりましたよね。実際にどれだけの調査を1年間に行っているかというと、平成22事務年度で全国では196件、名古屋国税局管内では23件です。名古屋国税局では年間たった23件ですが、マルサは脱税事件専門の強制調査であるため、裁判所の令状を持ってやってきます。しかも、年間23件の調査のために、名古屋国税局の査察部には、150人もの人員が所属しています。調査に入ればほぼ100%の確率で脱税が見つかり、しかもそのあと、6割から7割が検察に起訴され、刑事罰まで受けることになります。
一般的に、経営者の方は調査官が突然やってきたときに「マルサが来た」と言いますが、裁判所の令状を持ってこないマルサ調査はありませんので、安心してください。
税務調査がなぜ、うちの会社だけ多いの?
過去の税務調査で重加算税(仮装・隠蔽があった場合に課されるペナルティ)を何度も受けている会社については、頻繁に税務調査が行われます。
税務調査の前に準備することは?
以下、簡単に箇条書きにします。